大判例

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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)4968号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕 三 被告の抗弁

(一) (委託契約無効の抗弁)

仮に、原、被告間に原告主張どおりの先物商品売買取引の委託契約が成立したとしても右契約は次の理由からして無効である。

(1) (無登録外務員による委託の勧誘)

被告は昭和四四年八月末原告会社の従業員永光幸炭からの勧誘を受けて本件取引の委託契約をしたが、原告会社は右永光が自己の所属する東京穀物商品取引所の登録外務員の資格を有しないことを承知のうえで、被告に対して勧誘をさせたもので、原告会社の右行為は商品取引所法九一条の二第一項に違反するので、右契約は無効である。

(2) (不当勧誘と受託場所の制限違反)

被告は、原告会社の従業員永光幸炭から「小豆は一万三〇〇〇円以上は絶対に売りであつて確実に儲かるから私にまかせてほしい」との勧誘を受けたが、被告としてはいままで先物商品取引の経験は全くないところから、これを信じて昭和四四年九月三日に小豆の相場が一万三〇〇〇円以上になつたら売玉を建てるよう委託し、しかも、その委託の場所は被告が代表取締役である株式会社若尾工務店であり、同所で委託証拠金として金三五〇万円を手交した。右永光のこれらの行為は商品取引所法九四条の不当勧誘等の禁止および同法九一条の売買取引の受託場所の制限規定に牴触するものである。

〔判決理由〕(三被告の抗弁に対する判断)

(一) (委託契約無効の抗弁)

(1) (無登録外務員による不当勧誘と委託場所の制限違反)被告の主張によると、原告会社は外務員の登録のない永光幸炭をして営業所以外の場所で先物商品取引の委託を勧誘させ、しかも、右永光は被告に対し小豆取引は確実にもうかる旨述べて勧誘したもので、いわゆる商品取引所法九一条、同条の二および九四条に違反するものであるから、本件小豆の先物取引の委託契約は無効となるというが、勧誘行為が右条項に反したからといつて本件委託契約が無効となるとは解し難い。何故ならば、確かに右条項が無資格者の横行を防止したり委託場所を制限したり、また、利益が生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供することを禁止することによつて、商品売買委託の安全を図り委託者を保護しようとするものであることはいうまでもないが、それだからといつて、当該勧誘に基づく委託契約を無効であると解することは、委託者をして、当該取引により利益を生じた場合には無効を主張せず、損失が生じた場合にのみ無効を主張しうる余地を残すこととなり、これは委託者保護の要請の右範囲を超える結果となるから妥当でなく、この保護は商品取引所法一六一条の刑罰や同法一二二条の行政措置による制裁により維持されるべきものと解する。

したがつて、被告の右抗弁は主張自体理由がないから、その余の点につき判断するまでもなく失当である。(山口和男)

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